脳卒中の外科
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症  例
高齢初発の片側バリスムで診断されたもやもや病の1例
佐藤 甲一朗出井 勝野上 健一郎呉島 誠外尾 要鳥居 里奈魚住 武則山本 淳考
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2022 年 50 巻 6 号 p. 508-513

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抄録

もやもや病は舞踏運動などの不随意運動を契機に診断されることがある.しかし,その多くは小児・若年成人例である.今回われわれは,高齢初発のバリスムを契機に診断されたもやもや病の1例を経験し,ハロペリドール内服で良好な経過を得たので,文献的考察とともに報告する.

症例は79歳,女性.2カ月前から右上肢が勝手に動くようになり,頻度,動きともに増悪し,日常生活に支障をきたすようになったため当科受診となった.高血圧の既往と,長男と孫にもやもや病の家族歴を認めた.意識清明で脳神経系・感覚系に異常は認めなかったが,右上肢を投げ出すバリスム様の不随意運動と右下肢に舞踏運動様の不随意運動を認めた.頭部MRAで内頚動脈終末部の高度狭窄と閉塞を認めた.家族歴と画像所見より,もやもや病に関連した不随意運動が疑われた.精査目的に脳血管造影検査を施行したところ,鈴木分類にて右:第3期,左:第5期の典型的もやもや病であった.ハロペリドール内服による薬物療法を開始したところ,内服開始後より不随意運動の軽快がみられ,10日後には完全消失した.

本症例は79歳初発のバリスムを契機に診断されたもやもや病であったが,われわれが渉猟し得た過去の報告の中で最高齢であった.まれではあるが,高齢初発の不随意運動例ではもやもや病の可能性を考慮する必要がある.本例のような高齢者においては薬物療法のような非侵襲的治療も考慮すべきと思われる.

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© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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