2024 年 52 巻 3 号 p. 182-188
脳動静脈奇形(AVM)は,塞栓術や診断機器の進歩によって恩恵を受けた脳血管障害疾患の1つと考える.当施設では,主に外科的切除術を中心に治療を行ってきた.その変遷と現状の課題について検討した.対象は2007年以降に切除術を行った65例である.2014年以前(30例)と2015年以後(35例)で,AVM治療戦術の進歩と変遷を後方視的に比較検討した.Grade 3以上の高グレード症例は後半期で有意に高く,難易度の高い症例の割合が増えた.術前塞栓術は前半期で9例,後半期で24例と有意に増加した.また,モニタリング施行例も後半期で有意に増加した.治療結果として,morbidityは8例,mortalityは1例であり,前半期と後半期の有意差はなかった.多変量解析では,morbidityやmortalityのリスク要因として年齢(オッズ比 0.943,p=0.033)と高グレード(オッズ比 16.728,p=0.006)が関与していた.積極的な塞栓術やモニタリングにもかかわらず,高グレード症例は依然として最も高いリスク要因であった.一方で,塞栓術後の脳出血の発生もあり,段階的な塞栓術の治療プロトコールは再考する必要があると考えている.脳機能を重視し,破裂低グレード症例の確実な治療は安定して行われている.マルチモダリティによる高グレード症例に対する治療の成績をさらに向上させる必要があると考えている.