2024 年 52 巻 5 号 p. 370-374
73歳,女性.3日前から頭痛と歩行困難を生じ,近医にてくも膜下出血(Hunt & Kosnik分類 Grade III)と診断された.CT血管造影では,Heubner反回動脈(recurrent artery of Heubner:RAH)分岐部および右前大脳動脈(A1)後壁に小さな脳動脈瘤を指摘され,発症3日目と脳血管攣縮期に入りつつあったことから,血管内治療の適応を目的に当院に転院搬送となった.転院同日に全身麻酔下にコイル塞栓術を試みたが,いずれの動脈瘤も径2mm前後ときわめて小さく,瘤内への安全なマイクロカテーテル誘導は困難と判断し,血管内治療を断念し,急性期は鎮静下に全身管理を継続した.第20病日にMRI検査を施行し,MRI-VWIとMRAのfusion imageより,RAH分岐部動脈瘤に一致する血管壁の造影効果を認め,RAH分岐部動脈瘤破裂と診断した.第22病日に右前頭側頭開頭で,RAH分岐部動脈瘤にネッククリッピング術および右前大脳動脈後壁動脈瘤に対するラッピング術を施行した.患者は,脳血管攣縮による脳梗塞と長期臥床のためリハビリテーションを要し,第56日に転院となった.RAH分岐部に生じる動脈瘤は,きわめてまれで,これまでに10例が報告されているにすぎず,中でもRAH分岐部に生じる囊状動脈瘤に関する詳細な報告例は認めない.RAH関連動脈瘤に対する外科的アプローチについての文献的考察を加え,報告する.