脳卒中の外科
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症  例
脳内血腫を合併した重症くも膜下出血に対するクラゾセンタンの使用経験
本多 赳善面高 俊介岩本 憲宏佐藤 加奈子成田 徳雄遠藤 英徳
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2024 年 52 巻 5 号 p. 375-381

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抄録

クラゾセンタンはくも膜下出血において脳血管攣縮を抑制し転帰を改善させることが示されているが,脳内血腫を伴う重症例における有効性は明らかとなっていない.今回われわれは,脳内血腫を合併した重症くも膜下出血に対してクラゾセンタンを使用した2症例を経験したので報告する.

〈症例1〉45歳,女性.

突然の意識障害で発症,来院時意識レベルはGCS 7,CTで右側頭葉に脳内血腫を伴うくも膜下出血を認めた.右中大脳動脈瘤破裂の診断で緊急で開頭クリッピング術および脳内血腫除去術を施行した.術後はクラゾセンタンを使用し脳血管攣縮の合併なく経過しmRS 1で自宅退院した.

〈症例2〉82歳,女性.

突然の意識障害で発症,来院時意識レベルはGCS 9,CTで右側頭葉に脳内血腫を伴うくも膜下出血を認め,緊急で開頭クリッピング術および脳内血腫除去術を施行した.術直後の胸部CTで肺水腫を合併していたが,脳血管攣縮期は利尿剤を用いた体液バランス管理を行いつつ,クラゾセンタンの投与を行った.症候性脳血管攣縮の合併なく神経学的回復が得られたが,廃用によるADL下があり施設入所となった(mRS 3).

本2症例では緊急手術による速やかな頭蓋内圧の是正と再出血予防処置,クラゾセンタンの使用が転帰改善に寄与した可能性がある.クラゾセンタン使用下では呼吸器合併症回避のために厳格な体液バランス管理が肝要と考えられた.

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