2025 年 53 巻 6 号 p. 393-399
近年,flow diverter(FD)の普及により傍鞍部動脈瘤に対する直達術の機会は減少しているが,5mm未満の小型動脈瘤や,視力・視野障害を伴う症候性病変では,直達手術が依然として有用である.本研究では,Dolenc’s approachに基づく前床突起削除と遠位硬膜輪(distal dural ring:DDR)の全周性開放によって,安全かつ効果的にクリッピングを行った2例を報告する.
症例1は眼動脈分岐部に発生した3.8mmの動脈瘤で,前床突起削除と部分的なDDR開放により安全なclip placementを得た.症例2は内頚動脈caveに6.6mmの動脈瘤を認め,retrograde suction & decompression法を併用し,DDRを全周にわたり切離することで内頚動脈の可動性を最大化し,クリップによる完全閉塞を達成した.
いずれもCTA-SSFP fusion imageで硬膜内外の評価を行い,術前計画に反映させた.術中はdura propriaの広範な剝離と顕微鏡下での床突起静脈叢の膜層の同定により,血管損傷なくDDRの開放を可能とした.
本手技は,安全な層を視覚・触覚で的確に識別し,血管を牽引せず膜のみを操作するという原則を守ることで,高度な病変への安全なアクセスを可能にする.傍鞍部動脈瘤に対する有用な直達アプローチの一手法として提案される.