2026 年 54 巻 2 号 p. 112-116
慢性硬膜下血腫(CSDH)に対して,中硬膜動脈塞栓術(MMAE)の有効性を示す報告が相次いでいる一方,穿頭術との使い分けや併用の適応方法については,いまだコンセンサスがない.今回,穿頭術のリスクのあるCSDHをMMAEのみで治療し,良好な経過を辿った1例を経験したので報告する.
57歳,男性.生体肝移植の手術歴あり,その後,薬剤性の腎機能障害で維持透析となり,免疫抑制薬とステロイドを内服中.発症4カ月前に,階段からの転落による頭部打撲歴あり.その後,軽度の右下肢麻痺,歩行障害をきたし,軽度の正中偏位を伴う左CSDHを指摘された.ステロイドと免疫抑制薬の服用があるため,穿頭術での創傷治癒遅延や手術部位感染症のリスクを勘案し,MMAE単独による治療を行う方針とした.マイクロカテーテルを左中硬膜動脈の前枝および後枝に誘導し,順に12.5%NBCAで塞栓した.周術期合併症を認めず,術後第2病日で退院となった.治療直後より右足の跛行は改善し,画像フォローでは経時的に血腫は縮小し,術後5カ月経過時点で血腫の消失を確認している.なんらかの理由で穿頭術を避けたい患者で血腫の圧迫が軽微な場合には,MMAE単独による治療も有用な選択肢となり得ると考えられる.介入のタイミングや適切な塞栓方法については,今後さらなる検討が必要であり,症例の蓄積が待たれる.