Second Language
Online ISSN : 2187-0047
Print ISSN : 1347-278X
ISSN-L : 1347-278X
寄稿「2021年J-SLA初夏の研修会」
ヴィゴツキーの外国語学習観
西本 有逸
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 21 巻 p. 23-33

詳細
抄録

本論文の目的は三つある,(1)ヴィゴツキー理論(媒介的発達理論・人格発達理論・情動発達理論)を明らかにすること,(2)ヴィゴツキーの外国語学習観を二つの労作から究明すること,(3)その外国語学習観から導出されるアップテイクの役割を重視した第二言語領有の概念発達モデルを提案することである.(1)ヴィゴツキー学の最前線はヴィゴツキーが三つの柱をうち立てたと仮定している.すなわち,人間の高次精神機能の媒介的発達理論,年齢期ごとの新形成物による人格発達理論,そしてスピノザ哲学から照射される一元論的情動発達理論である.(2)ヴィゴツキーの外国語学習観は外国語は上から下へと発達するというものである.上というメタファーは外国語学習は意識的な気づきと言語の意図的で自覚的な習熟で始まるという意味である.ヴィゴツキーの炯眼は意志と自覚とは科学的概念の門を通って発達する,とみていることである.最後に,(3)本論文は第二言語領有の概念形成モデルを提案する.当モデルは第二言語習得の計算言語学的モデルを模写しながらも,第二言語の知識ではなく概念の発達を重視しており,インテイクから連想されるアップテイクの役割を特徴としている.ヴィゴツキーは遥か彼方に人格の発達を見据えている.人格発達は概念の発達から自己意識が覚醒していく運動をその始源としているのである.

著者関連情報
© 2022 日本第二言語習得学会
前の記事 次の記事
feedback
Top