Second Language
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研究論文
L2英語における過剰受動化の主語有生性分析に対する批判的考察
田崎 佑
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2024 年 23 巻 p. 129-147

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抄録

1970年代以来, 第二言語習得研究では, 英語の過剰受動化 (Overpassivization) が多くの研究者の関心を集めてきた.この現象に対する近年の研究では, 主語の有生性が非対格動詞の受動文の過剰生成において重要な役割を果たすと考えられている.具体的には, 過剰受動化は主語の有生性に依存し, 非対格動詞が有生主語を取る場合よりも, 無生主語を取る場合の方が過剰受動化が多く観察されることが知られている.この分析は多くの研究者に支持されているが, その予測可能性に関する詳細な検証は十分には行われていない.本論文では, これまで提示されてきたデータと第二言語としての英語学習者コーパスから得られたデータを用いて, 主語の有生性に基づく分析の予測可能性について論じる.今回使用したデータの詳細な分析をとおして, 主語の有生性は一見過剰受動化に影響を与えているようにみえるものの, 主語の有生性だけでは過剰受動化を適切に説明することはできないことを示す。本論文では, 非対格動詞の過剰受動化の要因について, 従来提案されている主語の有生性ではなく、主語の動作主性が重要な役割を果たしていると主張する.

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© 2024 日本第二言語習得学会
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