2024 年 23 巻 p. 31-36
生成文法の極小主義的な探究では, 個別文法に対する記述的妥当性, 普遍文法 (Universal Grammar: UG) に対する説明的妥当性, そして系統発生 (言語進化) の妥当性を同時に満たすことが求められている.これらを同時に満たす「真に説明的な」理論の追求の中で提唱された極小主義の強いテーゼ (The strong minimalist thesis: SMT) には, 規律的機能 (the disciplinary function) と促進的機能 (enabling function) と呼ばれる二つの役割がある (Chomsky, 2024).この論文では、SMTが成立する論理を概観しながら, 近年強調されるSMTの促進的機能が, どのようにして新たな見方を提供してくれるのかを考察する.