2010 年 9 巻 p. 49-62
本研究は,英語母語話者と英語圏在住経験の異なった日本人英語話者が,どのように音節の長さとポーズを使って,複合語と句を弁別するかを調査した。英語母語話者12名と英語圏在住経験の異なった日本人英語話者のグループ各12名(平均在住期間3年7ヶ月と平均在住期間7週間)が強制2択課題を行った。まず,複合語(例:blackboard)と同じ音韻をつかった句(例:black board)を目標単語とし,20組抽出した。長さ以外の要素を同等にするため,プロミネンスを第一音節に置く埋め込み文を作成し,英語母語話者が読み上げた文章を録音した。そして,目標単語の第一音節と第二音節の間に100msのポーズを挿入したものを併せて,4種類の刺激音を合計80作成した(複合語,ポーズの入った複合語,句,ポーズの入った句,各20×4=80)。調査は一人ずつ静かな部屋でコンピューターを使って行われた。最初にヘッドフォンから目標単語が聴覚的に提示され,次に,複合語と句の両方が視覚的に画面に提示され,被験者はどちらかを選択してボタンを押すように指示された。これを80セッション行った結果,全てのグループが音節の長さよりもポーズで複合語と句を弁別しているということがわかった。