2010 年 9 巻 p. 63-82
本論の目的は,日本人英語学習者(JLE)による主語パラメター再設定の過程を極小主義,とりわけChomsky(2007, 2008)およびMiyagawa (2005)で提唱された素性継承理論の枠組に基づいて考察することである.主たる主張は,当該パラメターの再設定が,一致素性のCからTへの浸透の習得と焦点素性のTからの除去という2段階からなるというものである.399名の中学生を対象とした調査の結果,JLEにとって一致素性のTへの浸透を習得するのは比較的容易であるが,焦点素性をTから取り除くのが困難な場合があることが明らかになった.そのようなJLEは英語と日本語の混交的なパラメター値を持つこととなり,英語の虚辞主語構文を正しく容認すると同時に,非適格な空主語構文を,文頭要素を日本語的な話題主語であると解釈することで,誤って容認してしまう.