Second Language
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日本人英語学習者の英語疑問文習得におけるwh移動の制約
アンドリュー ラドフォード横田 秀樹
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2006 年 5 巻 p. 61-94

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抄録
英語のwh疑問文 (問い返し疑問文を除く) では, 疑問節の文頭へのwh表現の移動が要求される.また, 長距離疑問文においては, What dress do you think she will wear?のように, wh表現がより低い節からより高い節へと移動することが可能なようである.wh移動は, UGの原理によって要求される局所的コピー操作 (local copying operation) である.つまり, 継続循環的に, 一度に1つの節といったように局所的に, wh要素はそれぞれの節頭に移動するが, その移動に際して, 移動された構成要素はコピーとして節頭に置かれ, その後コピー元の要素は削除されるのである, 本研究は, 英語母語話者が長距離疑問文を使用するコンテクストにおいて, 初級日本人英語学習者が産出する一連の構造を調べるために行った抽出タスクと文法性判断タスクの報告をする.結果として, 学習者は, 目標どおりの長距離疑問文とともに他のタイプの構造も産出した.その中には, What do you think color she likes?といった wh 分裂 (wh-spliUing) 構造に見られる wh 移動の局所的操作の証拠や, What do you think what color she likes?のような主節と従属節の両方の節頭にwhatのコピーを持つ二重wh (wh-doubling) 構造といったwh移動が観察された.本研究の被験者である学習者によって産出された統語構造を調べた結果は, L2文法においても wh 移動は局所的コピー操作であるという実証的証拠を提供するものである.したがって, L2学習者が産出する統語表示は, UGの原理によって制約を受けていると結論付けられる.
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© 日本第二言語習得学会
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