日本生気象学会雑誌
Online ISSN : 1347-7617
Print ISSN : 0389-1313
ISSN-L : 0389-1313
原著
滋賀県東近江市五個荘金堂地区に形成される屋外熱環境
伝統的建物群集落における夏季の小気候
橋本 剛長野 和雄石井 仁堀越 哲美
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 47 巻 1 号 p. 13-23

詳細
抄録

本研究の目的は,伝統的な町並みの夏季における屋外熱環境デザインとしての気候的特性を明らかにすることである.調査対象として文化財保護法に基づく「重要伝統的建造物群保存地区」である滋賀県東近江市五個荘金堂地区を選定し,小気候観測を 2006 年の夏季に行った.なお,観測時において集落では 723 人の住民が生活していた.観測の結果,夏季の晴天日における低層木造住宅の集落では集落内外の気温差は日中に最も大きくなり,ヒートアイランドが形成されることがわかった.一方,早朝には,風速が弱い条件下で集落内外の気温差がほとんどなかった.今回の観測結果では,2006 年 8 月 15 日 14 時に水路沿いと水路のない場所で気温差が認められたが,地上約 90 cm における気温及び湿度分布に水路の影響はほとんどみられなかった.道路と水路の表面温度の差は昼間には最大で 32.3℃に及び,このような場合には,冷熱源及び相対的に低温な放射面として暑熱環境緩和の働きがあることを示した.

著者関連情報
© 2010 日本生気象学会
前の記事 次の記事
feedback
Top