2015 年 67 巻 3 号 p. 259-264
本稿では,障害を受けた患者肝の代替が可能な肝組織相当物の構築に関する融合的なアプローチに焦点を当てる.このような大型の移植可能肝組織は,体積当たりの肝機能がin vivo のそれと同等でありかつ総体積は500 cm3 となるが,現状の技術では特に細胞への物質供給が制限因子となってその構築は容易ではない.この点を解決するために我々は,ボトムアップ的およびトップダウン的な組織工学的手法の融合に基づく新たな工学的方法論を提案する.これは,臨床学的に意義のある大きさでありながら高い単位体積当たりの肝機能を発揮させるために,ミクロからマクロに至るスケールでの物質供給の同時改善を可能する手法である.