多摩川中流域はここ10年ばかりの間に流域の都市化に伴なって著しく汚濁化してきている.そこで, 汚濁河川の物質代謝を解明する手がかりとして, 比較的清洌な青梅市付近から汚濁の著しい丸子橋にかけての5地点で水質の変化を追跡するとともに, これに対応して付着性微生物(藻類および細菌)の現存量がどのように変化するかを, 1971年8月と1972年3月の2回にわたって, 調査した.その結果, 付着性の藻類, 細菌の現存量はどちらも上流から下流にかけて顕著に増大することが判明した.すなわち, 丸子橋付近の最大現存量はクロロフィル(a+b)として1,080mg/m^2,生菌数として1.6×10^9細胞/cm^2,全菌数として1.0×10^<10>細胞/cm^3であった.これらの付着性微生物は汚濁河川の自浄作用に大きく貢献しているものと思われるが, 菌体自身が二次的な汚染物質として機能している可能性も大きい.