抄録
ほとんどの植物器官には多様な微生物が存在し、植物と緊密に影響を及ぼし合い、植物の生態や進化と大きく関わっていることが近年の研究で明らかになってきた。それらの一部は種子を介して親から子へ伝えられるが、種子の微生物については研究が始まったばかりである。種子の微生物の網羅的解析により、多くの植物の種子から見つかる『コア微生物』を始め、さまざまな微生物が種子に存在することが明らかになっている。これらの微生物は、維管束を介して母植物から、花を介して母植物外から、あるいは開花後花以外の経路で環境中から、種子に定着すると考えられている。種子の微生物の中には、発芽した植物に耐病性を付与したり、種子の休眠解除に関わったり、植物の形質を変化させるものが存在する。このことから農学分野での応用も期待されているが、生態学的な視点からの研究はまだ多くない。種子の微生物の生態学的な機能を理解するためには、野生植物の種子の微生物はこれまで研究されてきた栽培植物のものとどう違うのか、個々の種子の微生物叢(びせいぶつそう)にはどのくらいの変異があって、それはどのような要因によるのか、といった研究に取り組むことが第一歩となるだろう。種子は、植物の生活史において、世代を繋ぎ厳しい環境を凌ぐための重要なステージである。種子の微生物の研究は、植物と微生物の共生関係の鍵となる知見をもたらすと期待される。