抄録
花上に生息する微生物(花の微生物)と訪花動物の関係性に関する研究は、微生物のメタゲノム解析の普及にも後押しされ、2000年以降、急速に発展している。本総説では両者に関する研究を、1.花の微生物群集形成における訪花動物の役割、2.花の微生物が訪花動物の行動や健康に与える影響、3.訪花動物に運ばれる花の微生物が植物の健康や繁殖成功に与える影響、の3つに分類し、研究の歴史と最新の知見を紹介する。花の微生物と訪花動物が相互に影響しあう関係性は、微生物と訪花動物の種の組み合わせによって多様である。さらに、訪花動物の行動は、彼らが直面する環境変動を受けて可塑的に変化するため、野外の訪花動物と植物の相互作用や、相互作用の進化における花の微生物の役割は明らかでない。本総説では、一義的には決まらない、花の微生物による多様な影響の例をできるだけ多く紹介し、訪花動物と花の微生物、植物の間の複雑で興味深い相互作用の世界を案内する。本総説を通じ、花の微生物と訪花動物の研究に残されている広大なフロンティアを感じ、興味を持っていただければ幸いである。