2020 年 61 巻 1 号 p. 38-45
自然派であることを強調するために食品材料等を用いて洗浄を行う,いわゆるナチュラルクリーニングが一部の消費者の間で流行しており,関連する情報が多数使われている.しかし,それらの情報の中には科学的に誤った内容も含まれているように思われる.そこで本研究ではアルコール飲料の中でもビールを用いた洗浄に着目し,消費者情報の一般的傾向を探るとともに,各種情報の真偽を検証した.消費者情報では洗浄へのビールの活用は,油汚れに有効とされ,その要因としてアルコール,ビタミン,酵素,タンパク質などが挙げられていることが分かった.実験的検証の結果,SDS ほどではないが,水洗いに比すると油性汚れの洗浄性が高く,アルコール濃度の高い日本酒や洋酒以上の洗浄性を示した.洗浄試験により洗浄力の要因を推定した結果,アルコールとタンパク質の複合効果によるものである可能性が示唆され,消費者情報で主流のビタミン説は否定された.