抄録
本研究では,氷河の形状復元と流動モデルの融合による平衡線高度決定モデル(SR モデル)を,日高山脈北部地域に後期更新世に発達した氷河の復元例に適用して過去の氷河の平衡線高度(paleo-ELA)の検出を試みた.その結果,氷河の表面形状を考慮した場合としない場合とで,SR モデルによって求められたpaleo-ELAに違いがみられた.また,基盤地形の起伏により流動方向に氷厚が大きく変化する氷河では,複数の高度にpaleo-ELAが検出された.これらの結果は,氷河表面形状や基盤地形の再現度合いが,paleo-ELAの復元を左右する重要な要因となることを示している.また,モデル計算の結果に応じて試行錯誤で氷河の形状や流動に関する諸条件を再調整することで,動力学的あるいは質量収支的観点から見て,過去の氷河をより正確に3次元で復元できる可能性を示した.