雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
氷河の形状復元と流動モデルの融合による平衡線高度決定モデルの構築
澤柿 教伸山口 悟阿部 洋祐
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2014 年 76 巻 1 号 p. 19-31

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抄録
氷河の平衡線高度(ELA)は,地域的な気候条件を示す重要な指標である.古環境の復元においては,paleo-ELA を推定する際,氷河の涵養域比(AAR)がよく用いられてきたが,AARには,簡便さの反面,氷河の個体差や降水条件に左右される問題点が指摘されているのに加え,AARの算出の根拠となる氷河の復元が,動力学的あるいは質量収支的に妥当かどうかという視点で検証された例はほとんどない.本研究では,簡便さをそなえつつAAR法には頼らないELAの決定方法として,3次元形状を与えた氷河に対し,数値モデルを用いてその流動場を計算し,その結果を基に表面における質量収支の符号を推定し,その正負が反転する高度をELAとして算出するモデルの開発を試みた.また容易に氷河の流動や表面形状に関する諸条件を設定できるようにして,それらの寄与度を検討できるようにした.開発したモデルを氷厚分布が比較的良く明らかにされているスイスとスウェーデンに現存する氷河に適用して妥当性を検証した結果,モデルの計算値は観測値と同様のELA を示し,このモデルの妥当性が確認された.また,計算条件の設定を変化させた結果から,氷河の流動に関する諸条件の違いは本モデルを用いたELAの復元に直接的に寄与しないことが示された.一方,基盤地形の起伏により流動方向に氷厚が大きく変化する氷河では,複数の高度にELAが検出され,氷河表面形状や基盤地形の再現度合いがELAの復元を左右する重要な要因となることが示された.
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© 2014 公益社団法人 日本雪氷学会
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