アイスコアからの過去の気候・環境変動復元の手がかりとするため,2004年8月・9月に中国西部・七一氷河表面の雪と氷および降水を採取し,化学分析を行った.氷河表面の雪と氷の平均pHは7.07だった.総陽イオン濃度と総陰イオン濃度の差(ΔC)とCa
2+濃度とMg
2+濃度の和の間の相関はr=0.98と,非常に高かった.Ca
2+,Mg
2+とΔCは土壌や黄土中の炭酸塩鉱物を起源とし,氷河表面の雪と氷のpHへの影響が示唆された.これらは天山の氷河と同傾向で,七一氷河の化学組成は,乾燥・半乾燥地のダストの強い影響が考えられた.氷河表面のNa
+濃度とCl
−濃度の相関はr=0.93と高く,Na
+/Cl
−比が平均1.00±0.13だったことから,主要な起源は岩塩と考えられた.降水と氷河表面の雪と氷のイオン成分の割合を比較すると,Ca
2+,Mg
2+,ΔCがいずれも優先し,かつ降水に比べ雪と氷で顕著に大きくなった.これらは融解-再凍結過程によるダストからの溶解と乾性沈着の影響と考えられた.主成分分析の結果から,NH4
+を除く氷河表面の化学成分は,土壌・ダスト起源,人為活動起源,岩塩起源に区分可能と推察された.
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