抄録
ヒマラヤ・カラコラム山域の氷河は水資源として重要であることで知られているが,この地域に多く分布する岩屑に覆われた氷河(デブリ氷河)については,未だ広域で融解量や流出量を推定するには至っていない.岩屑に覆われた氷河の融解量分布は,1990年代に熱抵抗値を導入することにより,様々なデブリ厚の部分を含む氷河全体で推定可能であることが示されたが,岩屑層の厚い部分に適用すると,融解量を過大評価してしまう点が課題として残されている.近年ヨーロッパを中心に,物理モデルを使用し,岩屑に覆われた氷河の融解量分布を推定しようとする動きが広がっているが,計算に必要な岩屑の厚さ,熱伝導率などの分布を得ることは困難であり,モデルを広域に適用する際のハードルとなっている.今後物理モデルにもとづいた先行研究の結果も取り入れながら,広域における岩屑に覆われた氷河の融解量推定に向けて,熱抵抗値を使用したモデルを改良していく必要がある.