雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
雲粒のない板状結晶からなる弱層の観測と考察
阿部 修望月 重人
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 76 巻 6 号 p. 421-429

詳細
抄録

雲粒のない板状結晶の降雪直後の顕微鏡写真を撮影し,3日後,この降雪結晶からなる弱層の密度,剪断強度を測定するとともにその薄片構造を調べた.この結果,今回の弱層にはこれまで注目されてきた広幅六花だけでなく,大きな樹枝状結晶も含まれており,密度は過去に報告された降雪結晶のものより低かった.また,密度と剪断強度の関係では,等温変態にある積雪と同等であることがわかった.薄片構造からは,単結晶である雪結晶が斜面に平行に積み重なることにより,その剪断強度を低下させる可能性があるかについて考察した.このとき,単結晶氷の力学的異方性に基づき,それぞれの板状結晶が一様にc軸を斜面に対して垂直に堆積した積雪層に剪断応力が加えられたと仮定した場合の挙動を,脆性破壊と延性破壊の両面から検討した.これによれば,前者では結晶軸の方位による差は弱層の剪断強度にさほど大きく影響しないこと,後者では単結晶氷の底面滑りを仮定すると,長時間にわたる塑性変形がやがては延性破壊に至ることが想定された.したがって,これを抑制する機構を考慮しないと,現実には強度が増加する傾向のある弱層の振る舞いと合わないことがわかった.

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本雪氷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top