抄録
衛星観測から得られる海氷情報抽出には未だ不確実性が残されており,精度向上と信頼性の評価が課題となっている.衛星観測による海氷モニタリングに最も適したセンサの1つに,合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)がある.SARを用いた海氷厚の抽出には,海氷表面の誘電率を正確に知る必要がある.SARデータによる海氷厚推定のためのアルゴリズム開発には,現場観測データによる評価やフィードバックが必要不可欠であるが,誘電率の直接計測は計測機器が高額かつ可搬性に乏しいため,現場観測での使用は現実的ではなく,誘電率モデル等により算出するのが一般的であった.近年,可搬性に優れたベクトルネットワークアナライザ(Vector Network Analyzer:VNA)が利用できるようになり,雪氷域において自由空間法を基礎とした,マイクロ波を観測対象に垂直入射する場合の反射係数計測を用いた誘電率計測手法が提案され,その利用可能性が示されている.このことから,本研究では可搬型VNA と自由空間法を組み合わせたシステムを現場観測に応用することにより,海氷上の氷表面における誘電率の直接計測を実施した.誘電率の計測結果を誘電率モデルと比較した結果,過小評価の傾向にあるものの調和的な結果を得られた.