抄録
2017年3月27日,本州南岸を通過した低気圧に伴う大雪により,栃木県那須町で表層雪崩による災害が発生した.表層雪崩発生には短時間での多量の降雪が重要と言われているが,山岳域での大雪時の降雪強化メカニズムやその水平分布等の特性は理解が不足している.そこで,本研究ではこの大雪の事例解析を行った.また,1989〜2017年の那須における降雪事例について統計解析を行い,降雪・気象場の諸特性を調べた.
事例解析の結果,3月27日の大雪事例では低気圧接近に伴い,湿潤な北〜東風の強まりとともに形成された地形性上昇流が過冷却の水雲を下層で発生させていた.この下層雲と低気圧に伴う雲からの降雪が,Seeder-Feederメカニズムを通して那須岳の北〜東斜面で降雪を強化し,局地的な短時間大雪をもたらしていた.統計解析の結果,この事例と同規模の大雪は約3年に1度,3月としては約19年に1度発生していた.那須で大雪となる気圧配置は西高東低の冬型が63%,低気圧が30%であり,いずれも日降雪時間が長いほど日降雪深が大きかった.しかし,低気圧による降雪の場合には例外的に短時間で大雪になることがあり,これらの事例の多くは閉塞段階の低気圧が関東付近を通過していた.