雪氷
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Print ISSN : 0373-1006
論文
樹枝状結晶の成長と水分子の隣接面移動
山下 晃
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2021 年 83 巻 6 号 p. 609-618

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抄録

これまでに,水分子の双方の底面からの隣接面移動(AST)があって柱面が成長する薄角板の存在が明らかになった.本研究では,平滑な片方の底面と稜線模様などの凹凸がある面を主な表面とする樹枝状結晶について,水分子の隣接面移動(AST)の効果を調べる.

過去の実験の樹枝状結晶が,水分子の拡散場からの入射と片方の底面からの隣接面移動(AST)によって柱面が成長して生じていると仮定すると,多くの新たな理解や説明が可能になる.その内容は,片方の底面の役割が明確になること,凍結微水滴などからは水分子の隣接面移動(AST)の継続を可能にする薄い板状の張り出し形成があって樹枝状成長が始まること,先端部分のc軸に平行な向きのサイズに影響がない長時間の成長が説明できること,付着凍結雲粒が樹枝状成長の妨げになる明確な理由があること,稜線模様の成因の新たな説明が可能になること,などである.

“樹枝状結晶は,水分子の過冷却雲中の拡散場からの入射と片方の底面からの隣接面動(AST)によって柱面が成長する雪結晶である.” が結論である.

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© 2021 公益社団法人 日本雪氷学会
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