2017 年 30 巻 6 号 p. 365-372
液体クロマトグラフィー/タンデム型質量分析法(LC/MS/MS法)による水道水中の塩素酸分析法の検討と水道水質検査としての妥当性を検証した。分析法としては,試料を精製水で100倍(V/V)に希釈調製し,LC/MS/MS測定を行った。検討の結果,塩素酸の検量線は,標準液濃度0.2~10 µg/L(試料濃度:20~1000 µg/L)の濃度範囲で良好な直線性が得られた。0.5 µg/L塩素酸標準液(n=5)の繰り返し測定の併行精度(RSD)は,4.56%と良好であった。さらに,水道水の添加回収試験(50 µg/L, n=5, 5 days)を行った結果,併行精度(RSD)8.99%,室内精度(RSD)9.47%,真度(回収率)105%と良好な結果が得られ,厚生労働省が通知した「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の目標値の範囲内であった。LC/MS/MS法は,イオンクロマトグラフ法では分離が困難な水道水中の塩素酸のピークを適切に検出すること可能であり,選択性の高い分析法であることが確認できた。