環境科学会誌
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2017年シンポジウム
日本及び東南アジア諸国連合地域における持続可能な消費と生産に向けた取組の現状把握
劉 晨
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2018 年 31 巻 5 号 p. 227-240

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抄録

本研究では事例研究として,日本及び東南アジア諸国連合地域(以下ASEAN地域と略す)における地域社会やコミュニティレベルでSCP(持続可能な消費と生産)への転換に資する取組の現状を把握した。また,これらの取組を活性化・定着できた条件を探り,支援の方向性も検討した。

日本及びASEAN地域では多様な,SCPへの転換に資する小規模,分散的な取組が多く存在している。すべての取組は,人々の暮らしや地域の直面している課題をきっかけに始まっており,環境面の持続可能性とはマルチ・ベネフィットとして共存している。各取組はその主体と関係者との関係性から大きく次の三タイプに分けることができた;(1)ステークホルダー間の連携に基づいた協働型;(2)住民主導・主体とするニッチ型;(3)行政主導・主体とするパイロット型。このような取組を活性化・定着できた条件について,次の三つの知見が得られた。(1)取組の活動を活発化させる“場”が存在している。(2)地域内における地域資源の循環する“ループ”及び地域外と繋がるネットワークが形成されている。(3)時代のニーズや状況の変化に対応して活動の目的や内容が柔軟かつダイナミックに再編成・再構築されている。

この地域におけるSCPへの転換に資する既存の取組を水平展開することによってネットワーク化し,かつSCP同士の学び合い,助け合い,合意形成を促進する“場”の形成が求められる。

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© 2018 公益社団法人環境科学会
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