環境科学会誌
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一般論文
フミン酸を用いた酸解離定数が異なるクロロフェノール類の吸着
庄司 良 岩田 孝樹鈴木 大輔
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2018 年 31 巻 6 号 p. 252-260

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抄録

クロロフェノール類は水生生物に対して毒性を有することが報告されている。フミン酸は構造不定形の有機化合物で重金属イオンや有機物の吸着能を有し,環境汚染物質の濃度を低下させることが知られている。そこで本研究では,フミン酸へのクロロフェノール類の吸着に関する研究を行った。本研究で用いたクロロフェノール類はpKaが6から10の間に収まっている。したがって異なるpHで吸着実験を行うことでフミン酸に対するクロロフェノール類の吸着特性を調べることができる。フミン酸の構造のpH依存性を知るためにフミン酸の吸着サイトを測定した結果,フミン酸は低pHの場合と中性の場合においてカルボキシル基とフェノール基がプロトンを解離することが明らかとなった。フミン酸へのクロロフェノール類の吸着の研究では,2,4,6-TCP(トリクロロフェノール)はpHの上昇によって吸着量が大きく減少した。2,4-DCP(ジクロロフェノール)はpH 5, 6において吸着量の変化が見られず,pH 7において吸着量が減少した。p-CP(パラクロロフェノール)における吸着量のpH依存性は見られなかった。本研究で得られた結果から2,4,6-TCPがプロトン解離し,イオン化するとフミン酸にはほとんど吸着しないことが明らかとなった。また疎水性の尺度を示す分配係数logP値は大きい方が吸着平衡定数が上昇した。

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