環境科学会誌
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一般論文
わが国の食品ロス発生による温室効果ガス排出,天然資源の浪費および経済損失の評価
棟居 洋介 増井 利彦金森 有子
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2021 年 34 巻 6 号 p. 256-269

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抄録

わが国では2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され,2030年度までに食品ロス発生量を2000年度レベルから半減させることが目標となっている。しかしながら,食品ロスの発生が環境,経済,社会に与える影響については定量的な知見が少なく,削減対策を効果的に実施するために,食品ロス発生による影響が大きいサプライチェーンの段階,品目を明らかにすることが喫緊の課題となっている。そこで本研究では,食品ロスの発生による環境と経済への影響に焦点を当て,食品製造業,食品卸売業,食品小売業,外食産業,および一般家庭において扱われる食品(食用農林水産物19品目,加工食品29品目)を対象として,食品ロスの発生に起因する温室効果ガス排出量,土地・水資源の損失量,および食品の経済的価値の損失額を推定した。2015年を対象に分析した結果,同年のわが国の食品ロスの総発生量は646万tであったが,上位10品目で総発生量の75.6%を占めていることが示された。また,食品ロスの発生によりサプライチェーンを通して直接的,間接的に発生した温室効果ガスは1,566万t CO2 eqと推計され,同年のわが国の温室効果ガス発生量の1.2%に相当することがわかった。天然資源については,国内外において農業生産時に111万haの土地資源と,4億3,870万m3の水資源が食べられずに廃棄された食品の生産に利用された。さらに,食品の経済的価値の損失は年間4兆5,870億円と推定され,国民一人当たり年間3万6,000円相当となった。本研究から得られた基礎的な知見を考慮して削減対策の優先順位を設定することにより,より効果的な食品ロスの削減対策の遂行が期待される。

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