環境科学会誌
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気液界面培養を用いた浮遊粒子状物質のバイオアッセイ手法の開発
清水 啓右富田 賢吾鶴 達郎酒井 康行迫田 章義
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2002 年 15 巻 6 号 p. 425-431

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抄録
 近年,大気中の浮遊粒子状物質(SPM)のヒト健康影響が懸念されている。環境汚染物質の人体影響を簡便に評価する手法として,培養細胞などを用いたバイオアッセイ手法が注目されているが,大気環境評価への適用を目指した研究はあまり進んでいない。そこで本研究では,浮遊粒子状物質の簡便かつ迅速なバイオアッセイ手法の確立を最終目的として,ヒト肺胞上皮由来細胞の気液界面培養に基づくバイオアッセイの可能性について検討を行った。この培養方法を用いると,粒子がヒト肺胞上皮に直接的に接するという実際の曝露形態を再現できる。ディーゼル排ガス中に含まれる化学物質の1-ニトロピレンを炭素粒子に吸着させたモデル浮遊粒子状物質を調製し,気液界面培養された細胞層に負荷,1週間後の生存率を測定した。その結果,異なる径の粒子について,負荷量と生存率の間の用量作用関係を得ることができたことから,本手法による浮遊粒子状物質の毒性評価が可能であることがわかった。また,溶出した1-ニトロピレンの1週間後の膜透過率は,初期負荷量の15~20%露形態を模倣可能であり,また体内への取り込み量をも評価可能であることから,SPMの優れた影響評価法に発展可能である。
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