環境科学会誌
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海産魚を用いた毒性試験
角埜 彰
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2005 年 18 巻 2 号 p. 131-136

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抄録

 近年,漁網防汚剤,船底塗料等に含まれる殺生物剤あるいは油流出事故等の海洋汚染問題を契機に,海洋生態系に対する環境汚染物質の影響評価の重要性が高まっている。各種化学物質の生態系に対する影響評価には,種々の生物を用いた毒性データが必要とされる。しかしながら,海洋生態系の中でも重要な地位を占める海産魚を用いた毒性試験はあまり普及していない。魚類を用いた毒性試験の中でも簡便な急性毒性試験には,種苗生産の対象魚種,例えばマダイ,クロダイ等が試験魚として利用でき,淡水魚を用いた従来の急性毒性試験法を若干修正することにより試験の実施が可能である。一方,慢性毒性試験に適した日本産の海産魚は見当たらないため,これに代わる試験魚としてアメリカ原産のマミチョグの使用を検討した。その結果,マミチョグの受精卵から稚魚期までを試験期間とする初期生活段階毒性試験によって無影響濃度(No observed effect concentration :NOEC)を求めることが可能であることが明らかとなった。さらに,マミチョグの急性毒性値を,マミチョグのNOECで除した値である急性慢性毒性比(Acute-to-chronic toxicity ratio:ACR)を用いることにより,急性毒性値のみしか得られない日本産の海産魚についてもNOECを推定することが可能となった。

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