環境科学会誌
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シオミズツボワムシに対する農薬曝露影響
柏田 祥策持田 和男
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2005 年 18 巻 2 号 p. 144-154

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抄録

 有機リン殺虫剤fenitrothionに長期間曝露された海産動物プランクトンByachionus plicatilis(シオミズツボワムシ)のfenitrothionを含む同種殺虫剤(salithion, phenthoate,dichlofenthion, cyanophos, diazinonおよびmalathion)に対する耐性および消失能への影響について検討した。その結果,曝露によりphenthoateおよびmalathion以外の上記化合物に対するLC50値が上昇し,化合物耐性が増大していることが明らかになった。また化合物消失速度定数(kz値),生物濃縮係数(BCF値)および化合物代謝率を測定した結果,fenitrothionに対するkZ値およびBCF値は,曝露によりそれぞれ約2倍および約1/2倍に変化していた。また体内に取り込まれたfenitrothionの代謝率は78.0%から99.9%に増加していた。このことから曝露により曝露化合物に対する取込・排出速度および代謝速度が増大し,耐性が高まることが明らかとなった。これらの結果は14C-fenitrothionを用いた代謝実験:からも明らかとなった。同様に他の有機リン殺虫剤についても検討した結果,代謝率はほぼ100%に達していた。本研究により,B.plicatilisに対するfenitrothion曝露は有機リン殺虫剤に対する取込速度,排出速度および代謝速度のバランスを変化させ,殺虫剤耐性を変化させることが明らかとなった。

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