抄録
ISO14001の認証を取得する事業所が増加している。この認証は環境対策についてPlan・Do・Check・Actionの取組みができる組織体制が整っているかを審査・認証するものであり,認証取得が実際に環境パフォーマンスの改善に役立つかという観点から先行研究が行われてきた。本研究では,認証取得が環境負荷管理に与える影響だけではなく,通常の生産活動に与える影響も分析対象とすることで,認証取得の効果をより広く考察した。具体的には,紙パルプ産業に焦点をあて,ISO14001の認証取得が生産性に与える影響を事業所レベルのデータを用いて分析を行った。生産性の測定にあたっては,市場で扱われるインプット・アウトプットのみを用いての測定と,環境負荷物質(二酸化炭素及び廃棄物)の排出量も含めた測定の両方を行った。その後生産性に対して,認証取得がどのような影響を与えるか分析を行った。その結果,環境負荷物質を含めて測定した生産性に対しても,また含めないで測定した生産性に対しても,プラスの影響を与えることが観測できた。このため,環境マネジメントシステムを有効に活用できれば,環境負荷管理だけではなく,生産活動全体の生産性を上昇させる可能性があることが明らかとなった。