都市内での循環型水利用を構築する一つの方法として都市排水の土壌浸透による地下水の涵養が考えられる。土壌浸透処理の可能性を評価するために下水二次処理水を土壌カラムに通水し,水溶性有機汚染物質の除去について調べた。ステンレスカラム(内径20cm,長さ60cm)に土壌(関東ローム層)を詰め,そこに下水二次処理水を300mL/hrの速度で通水させた。長さ20cmと50cmの2つの系で実験を行った。通水開始後,71日間の間に6回採水を行い,原水,および流出水中の化学物質濃度の測定および女性ホルモン活性の測定を行った。対象とした化学物質は,アルキルフェノール類ビスフェノールA,女性ホルモン類蛍光増白剤,直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩,医薬品10種(aspirin, ibuprofen, naproxen, ketoprofen, me : fenamicacid, p-hydroxybiphenyl, triclosan, crotamiton, carbamazepine, diethyltoluamide)である。女性ホルモン類オクチルフェノール,ビスフェノールAについては全実験期間中の除去率が89%以上と高い除去が観測された。バイオアッセイにより測定された女性ホルモン活性も99%以上の除去率が示された。これらの結果は土壌浸透処理が都市排水の女性ホルモン様物質の除去に有効であることを示している。一方,医薬品については,triclosanやibuprofenのように全実験期間中の除去率が90%以上の高い値を示す物質もあったが,crotamitonやcarbamazepineのように20%程度の除去率しか示さない物質もあり,除去効率は化学物質問で大きく変動することが確認された。各化学物質の除去効率を土壌浸透実験初期及び後期に区分し,オクタノール/水分配係数(K
ow)と微生物分解性との関連で考察し,対象化学物質の土壌浸透過程における除去機構を議論した。その結果,1)スルホン基を持つ蛍光増白剤及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩については土壌中にて交換反応又は化学的沈殿反応により除去が起きている,2)女性ホルモン様物質及び医薬品については実験開始初期には土壌有機物への分配吸着による除去が起きており,それ以降は微生物分解が除去に寄与していると考えられた。
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