日本顎口腔機能学会雑誌
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特別講演
味とにおいの奏でる食のハーモニー(味わいの脳科学)
村本 和世
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2016 年 23 巻 1 号 p. 1-9

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抄録
我々は食物を摂取するとき,多くの感覚を駆使して,食べ物の情報として統合している.この情報取得は,本来食物を識別し,摂取の可否を判断するために進化してきたと考えられるが,ヒトにおいて単なる摂食可否の分析から,美味しさを楽しむという別の情報処理が加わってきた.美味しさの基本となる情報,“風味”は食物の味だけでなくにおいや舌触りのような食感をも加えた総合感覚であり,特に味覚と嗅覚との感覚間相互作用が風味形成では重要となる.しかし,風味形成の脳内情報処理機構や感覚間相互作用が行われている脳領域については未だはっきりとはしていない.本稿では,風味の構成要素として重要な味覚と嗅覚の役割,受容機構,伝導経路,脳内情報処理機構などについて簡単に解説する.さらに,風味形成における“島皮質”の役割についての我々の研究の一端を紹介し,食に関する感覚・風味について考察してみたい.
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© 2016 日本顎口腔機能学会
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