抄録
【目的】咀嚼筋活動は最大随意咬みしめ(MVC)に対する相対値である%MVC値で表されることが多い.本研究の目的は,ブラキシズム患者の日常生活での咀嚼時咬筋筋電図%MVC値と最大咬合力の関係を明らかにすることである.
【方法】被験者はブラキシズムの臨床診断を受けた女性19名である.ウェアラブル超小型筋電計を主咀嚼側咬筋部皮膚に貼り付け,日常生活での筋電図を測定した.測定2日目の食事時間帯のデータを解析対象とし,波形持続時間0.08秒以上,波形間隔0.08秒以上で,基線振幅3倍以上の振幅の波形を抽出した.各波形の最大振幅を求め,MVC時の波形振幅で除した%MVC値を算出し,被験者ごとに平均を求めた.最大咬合力はデンタルプレスケール®を用いて被験者ごとに2回測定し,その平均値を用いた.
【結果】被験者19名の最大咬合力の平均は518.8 N(標準偏差327.1 N)であった.また,咀嚼時筋電図%MVC値は平均64.3%(標準偏差27.4%)であった.各被験者の最大咬合力と咀嚼時%MVC値の平均値の間には有意な負の相関が認められた(相関係数 RS=-0.71,p=0.0025).
【結論】ブラキシズム患者の咀嚼時筋電図%MVC値と最大咬合力の関連性が明らかになり,最大咬合力が小さい患者では大きい%MVC値で表現される傾向が示された.個々の患者の咀嚼時筋活動を筋電図%MVC値で評価する際には,最大咬合力の大きさを考慮する必要があることが示唆された.