日本顎口腔機能学会雑誌
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23 巻, 1 号
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特別講演
  • 村本 和世
    2016 年 23 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル フリー
    我々は食物を摂取するとき,多くの感覚を駆使して,食べ物の情報として統合している.この情報取得は,本来食物を識別し,摂取の可否を判断するために進化してきたと考えられるが,ヒトにおいて単なる摂食可否の分析から,美味しさを楽しむという別の情報処理が加わってきた.美味しさの基本となる情報,“風味”は食物の味だけでなくにおいや舌触りのような食感をも加えた総合感覚であり,特に味覚と嗅覚との感覚間相互作用が風味形成では重要となる.しかし,風味形成の脳内情報処理機構や感覚間相互作用が行われている脳領域については未だはっきりとはしていない.本稿では,風味の構成要素として重要な味覚と嗅覚の役割,受容機構,伝導経路,脳内情報処理機構などについて簡単に解説する.さらに,風味形成における“島皮質”の役割についての我々の研究の一端を紹介し,食に関する感覚・風味について考察してみたい.
原著論文
  • 中島 利徳, 山口 泰彦, 三上 紗季, 菱川 龍樹, 斎藤 未來, 岡田 和樹, 後藤田 章人, 谷内田 渉, 前田 正名
    2016 年 23 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル フリー
    【目的】咀嚼筋活動は最大随意咬みしめ(MVC)に対する相対値である%MVC値で表されることが多い.本研究の目的は,ブラキシズム患者の日常生活での咀嚼時咬筋筋電図%MVC値と最大咬合力の関係を明らかにすることである.
    【方法】被験者はブラキシズムの臨床診断を受けた女性19名である.ウェアラブル超小型筋電計を主咀嚼側咬筋部皮膚に貼り付け,日常生活での筋電図を測定した.測定2日目の食事時間帯のデータを解析対象とし,波形持続時間0.08秒以上,波形間隔0.08秒以上で,基線振幅3倍以上の振幅の波形を抽出した.各波形の最大振幅を求め,MVC時の波形振幅で除した%MVC値を算出し,被験者ごとに平均を求めた.最大咬合力はデンタルプレスケール®を用いて被験者ごとに2回測定し,その平均値を用いた.
    【結果】被験者19名の最大咬合力の平均は518.8 N(標準偏差327.1 N)であった.また,咀嚼時筋電図%MVC値は平均64.3%(標準偏差27.4%)であった.各被験者の最大咬合力と咀嚼時%MVC値の平均値の間には有意な負の相関が認められた(相関係数 RS=-0.71,p=0.0025).
    【結論】ブラキシズム患者の咀嚼時筋電図%MVC値と最大咬合力の関連性が明らかになり,最大咬合力が小さい患者では大きい%MVC値で表現される傾向が示された.個々の患者の咀嚼時筋活動を筋電図%MVC値で評価する際には,最大咬合力の大きさを考慮する必要があることが示唆された.
  • 三浦 寛貴
    2016 年 23 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は咬合接触状態の変化が姿勢制御にどのような影響を及ぼすのかを検討するため,下顎安静位,15%噛みしめ,30%噛みしめの3条件における安定域面積,重心動揺面積,姿勢安定度評価指標を比較検討した.
    【対象と方法】対象は研究参加に同意を得た,顎口腔系を含む全身に異常のない健常若年男性26名とした.測定は足圧分布計を使用し各条件での安定域面積,重心動揺面積,姿勢安定度評価指標を計測した.
    【結果】安定域面積は各条件間において有意差を認めなかったが,噛みしめ強度が大きくなるにしたがい拡大する傾向がみられた.重心動揺面積は15%噛みしめが30%噛みしめに比べて有意な減少を認めた.姿勢安定度評価指標は15%噛みしめと30%噛みしめとの間に有意差が認められ,15%噛みしめにおいて姿勢が安定することが示された.
    【結語】咬合接触状態が姿勢制御に影響を与えることが示唆された.特に,噛みしめの強度によって与える影響が異なることから,動作や運動パターンによって噛みしめの役割が異なると考えられる.
第56回学術大会抄録
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