日本顎口腔機能学会雑誌
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学術大会抄録
摂取食品に対する情動変化が脳神経活動に与える影響
長谷川 陽子吉村 将悟鈴木 達也白水 雅子サンタマリア マリアテリース山村 健介小野 弓絵小野 高裕
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2023 年 29 巻 2 号 p. 114-115

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抄録

I.目的

「おいしい」と感じる食事は脳を活性化させ,幸福感を生み出し,体に良い影響を与えると考えられている.日常的な食事では「おいしい,好き」と感じる快情動と,「まずい,嫌い」と感じられる不快情動とが混在し,人によって「おいしさ」の感じ方は様々である.前頭皮質は,経験依存的な風味処理の中枢を担っているだけでなく1),食経験や味嗅覚への記憶によって活動性が影響され,主観的な快楽経験にも深く関わっていることが知られている.

我々は,機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy:fNIRS)による脳神経活動の計測から,咀嚼時の情動変化と生体反応との関連性に注目して研究を行ってきた.先行研究では,ガムの味・香りが「おいしくない」と感じるガムを咀嚼した方が,「おいしい」と感じるガムより,左前頭極・背外側前頭前野において有意に脳血流変化が大きかった2).一方で,同じ硬さ・容量の被験食品(ガム)を使用したため,本来の個人の嗜好が考慮されておらず,被験食品ではなく,「おいしくない」ガムを「おいしい」と官能試験にて判定してしまう被験者がいる等,個々の嗜好に併せた情動変化を評価出来なかった.

そこで本研究では,被験食品を各人の食品嗜好にあわせたものを準備し,おいしいもの/おいしくないものをそれぞれ食べた際の脳血流変化をfNIRSで評価し,摂取食品に対する情動変化が脳神経活動に与える影響について明らかにすることを目的とした(新潟大学倫理審査委員会承認2019-0216).

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