2024 年 31 巻 1 号 p. 16-17
Ⅰ.目的
咀嚼は食物を嚥下しやすくするだけでなく,食物からのエネルギー摂取の効率を上げ,生命維持に重要な役割を果たす.咀嚼運動のパタンはリズミカルに反復される顎運動を基本とし,口腔内の感覚情報により,食物の物性に応じて変化する.縫線核に存在するセロトニン(5-HT)神経は,咀嚼を含めた呼吸や歩行などのリズミカルな運動で活動が増大し,様々な運動機能に関与することが報告されている1).咀嚼筋を支配する三叉神経運動ニューロンも5-HT神経からの入力を受け取り神経活動が調節される2).セロトニンは顎運動の制御に関与する可能性が高いが,セロトニン神経系が実際の咀嚼運動にどのように関与するか詳細は不明である.そこで本研究では,光遺伝学的手法を用いて,上位脳へ投射する背側縫線核(DRN)もしくは,三叉神経運動核を含む脳幹へ投射する不確縫線核(Rob)の5-HT神経を活性化し,咀嚼運動への5-HTの影響を検討した.