2026 年 32 巻 1 号 p. 55-56
Ⅰ.目的
日本において誤嚥性肺炎の患者数は年々増加し,2021年には約50000人が死亡しており,死因全体の3.4%を占めている.寺本らは70歳以上の高齢者の肺炎のうち80.1%は誤嚥性肺炎であったと報告しており1),誤嚥性肺炎後に経口摂取困難となる者も少なくない.経口摂取の再開が可能か否かは,禁食期間が短い方が退院時の経口摂取可能となる可能性が高い事が示されている2)が,百崎らの報告では41%の患者が誤嚥性肺炎で入院後30日以内に経口摂取が困難であったとされている3).退院後の経口摂取の可否については患者のQOLに大きな影響を及ぼすため,日本において急性期病院での治療期間は限られていることや,必要に応じて早期に回復期病院での集中的なリハビリテーションを行うためにも,入院して早期に経口摂取の可否の予後を予測できることは有用であると考えられる.
今回,食べることに対して包括的かつ多面的な食支援を実現するツールの1つであるKTバランスチャートを用いて,急性期病院に入院した誤嚥性肺炎患者を対象に,初診時の段階から退院時の経口摂取の状況に影響する因子を多面的に評価することで明らかにし,誤嚥性肺炎で入院直後の段階では経口摂取が全く困難とされた重度嚥下障害患者が少量でも経口摂取可能となるか否かに影響する因子を,初診時の段階から明らかにすることを目的とする.