Ⅰ.目 的
高齢者における咀嚼機能の低下は摂取食品の多様性を低下させ1),栄養摂取の変化を介してフレイルやサルコペニアの進行を助長することが懸念されている.また,食生活の変化により日常の食事における咀嚼回数が減少し,そのことが咀嚼機能の低下に影響を及ぼすため,噛みごたえのある食品を意識的に摂取する必要性が強調されている2).
咀嚼機能が低下すると,咀嚼回数の増加や咀嚼時間の延長など咀嚼行動における代償が必要と考えられる.しかし,客観的に測定した咀嚼機能(咬断能力)と咀嚼回数の間には相関関係が認められなかったとの報告もある3).このように,咀嚼機能と咀嚼行動との関係には,未解明の部分が多く存在する.
そこで本研究は,咀嚼機能が噛みごたえ(テクスチャー)の異なる食品に対する咀嚼行動の調整に及ぼす影響を解明することを目的として,まず健常有歯顎者を対象に,噛みごたえの異なる食品に対する咀嚼行動パラメータの比較を行うと共に,口腔機能との関連性について分析した.