Ⅰ.目 的
食品嗜好には,味や香りだけでなく物理的性質(食品テクスチャー)も大きく影響することがよく知られている.また,咀嚼して唾液と混和し,適切な食塊物性を形成することで安全な嚥下運動が行われていることから,口腔内での物性認知機能は摂食嚥下に欠かせない感覚である.しかしながら,食品テクスチャーに関する研究は,物性試験やヒト官能試験を行ったものばかりであり,動物実験による研究は非常に限られている.そのため,口腔内テクスチャー感覚における神経系メカニズムの解明が非常に遅れているのが現状である.
我々はラットを用いたテクスチャー認知実験を新たに開発することに成功し,粘性,粒子性,硬弾性の認知評価が可能となった.本研究では,ラットよりも遺伝子改変動物資源の豊富なマウスに対して新規テクスチャー認知実験系を適用した.マウスはラットと同じげっ歯類であり,容姿もよく似ているが,湿地を好むラットと乾燥地域に強いマウスでは食生の違いがあるため,異なるテクスチャー識別能を有する可能性がある.