Ⅰ.目 的
臨床で開口障害,非歯原性歯痛等を引き起こす認められる咬筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムは未だ解明がされていない1).過去の研究では,グルタミン酸注射によって引き起こされる実験的な咬筋痛が,咬筋の圧痛の感受性に影響を与えることが実証されているが,実際の咬筋の筋・筋膜疼痛が感覚機能へ及ぼす影響は,咬筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムを解明するためにさらなる検討が必要となる.
睡眠時ブラキシズムは,睡眠中に発生するクレンチングやグラインディングといった非機能的な咀嚼筋の筋活動と定義されている.睡眠時ブラキシズムは咀嚼筋の筋・筋膜疼痛を引き起こす一因と示唆されているが,その関係性は解明されていない.すなわち,睡眠時ブラキシズムが咀嚼筋の感覚機能へ及ぼす影響を解明することは,両者の相関を解明する上で有用な知見になると考えられる.
German Research Network on Neuropathic Pain(DFNS)は,体性感覚の異常を検出するための13の定量的感覚検査(QST)を推奨している2).Hayakawaらは,QST測定を用いた実験により咬筋の筋痛は深部の咬筋における感覚の変化のみではなく,咬筋上の皮膚における知覚の変動にも関与する可能性があることを示唆した3).しかしながら,持続的な咀嚼筋筋活動を生じる睡眠時ブラキシズムの習癖が咬筋の感覚機能に及ぼす影響を検討した報告は認めない.睡眠時ブラキシズムの習癖と咀嚼筋の筋・筋膜疼痛の両因子が咬筋の感覚機能に及ぼす影響を解明することは,咀嚼筋の筋・筋膜疼痛が生じるメカニズムを解明する一助になることが期待される.
本研究では,被験者を睡眠時ブラキシズムの習癖,咬筋の圧痛にて4群間に分類し,QSTを用いて咬筋表面における感覚機能を比較,検討した.