日本顎口腔機能学会雑誌
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耳鳴, めまいの基礎と顎機能異常
西崎 和則
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2003 年 10 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

顎機能異常は耳鳴やめまいのような耳症状を時に伴う.顎機能異常がこのような耳症状の原因であるのか, ストレスのような共通の原因で顎機能異常と耳症状が同時に引き起こるのかは十分解明されていない.最近の研究では顎機能異常に耳症状が有意に合併すること, 顎機能異常の治療後に耳症状が改善するグループが存在することが明らかにされ, 顎機能異常と耳症状の間の因果関係が見直されている.1934年にコステンが顎機能異常に随伴する耳症状を報告した後, 多くの仮説が提唱されているが, どれも満足のいくものではなかった.顎機瀧異常と同じく耳鳴やめまいの発生機序は不明瞭で, 多様な原因で発症しうる.このような理由で両者の因果関係を理解することは困難を伴う.
我々は純音聴力検査, ティンパノメトリーを使用して, 顎機能異常の耳鳴の伴う群と伴わない群で聴覚的に比較検討したが, 両群に差を認めなかった.めまいは自然治癒の傾向が強いので, 今回は検討していない.顎機能異常と耳鳴の間の因果関係を明らかにするには歯科医と耳鼻咽喉科医の協力が必須であるが, 歯科医は耳鳴やめまいの基礎的な知識を必要とし, 一方, 耳鼻咽喉科は顎機能異常の基礎的な知識を必要とする.耳鼻咽喉科医の立場から, 歯科医が顎機能異常を診断するのに必要な耳鳴やめまいの基礎的な知識について述べた.

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