日本顎口腔機能学会雑誌
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胸郭出口症候群と顎関節異常
千田 益生濱田 全紀堅山 佳美築山 尚司
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2003 年 10 巻 1 号 p. 7-10

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抄録

胸郭出口症候群 (TOS) とは, 頸から肩にかけての痛み, しびれ感, だるさなどを主訴とする症候群であり, 頸肋症候群, 斜角筋症候群, 肋鎖圧迫症候群, 過外転症候群など様々な病態の症候群を総括する疾患名である.TOSと顎関節異常の関係として, 顎関節の異常によって頸部の筋群, 特に前斜角筋, 中斜角筋などの胸郭出口を形成する筋群の緊張が強くなり, 神経絞扼を生じるという要因が推測される.TOSの診断では, 脈管テストとして, Adson, Wright, Eden, Allenなどがあり, 神経刺激テストとしては, Morley, Roosが有名である.WrightやAllenテストは, 陽性率は高いが偽陽性も高く, AdsonやEdenテストは陽性率が低い.Morleyは正常の被検者でも陽性にでることがあり, Roosテストが最も信頼できるとされている.画像診断として, 血管造影, 腕神経叢造影, MRIなどがある.機能的な診断法として体性感覚誘発電位Somatosensory Evoked Potentioal (SSEP) やF-waveなどの電気生理学的検査法も有用である.TOSの治療としては, 保存療法でほとんどの場合対応でき, 運動療法 (関節運動学的アプローチ: AKA) , リラクセーション, 筋力強化などを行っている.手術療法は, 器質的異常のある場合や保存的治療に抵抗する場合に適応になるが, 経腋窩第一肋骨切除術が行われることが多い.

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