日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
咀嚼筋筋活動の異常と関連疾患
山口 泰彦松樹 隆光
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 10 巻 1 号 p. 19-24

詳細
抄録

本稿では, 咀嚼筋の異常の他に関連症状を有して当科を受診した3症例を呈示し, 顎関節症症状と関連症状の関わり方の複数のパターンについて考えた.症例1は, めまい, 平衡感覚の異常, 症例2は軟口蓋振戦を有していたが, スプリントや咬合改善治療により, それらの症状は改善した.症例3は, 手の振戦, 咬筋, 僧帽筋, 胸鎖乳突筋のこわばりとだるさ, 開口障害, 咀嚼障害, 嚥下障害などを有し, 関連各科では明確な診断がつかず, 歯科では顎関節症の疑いとされたが, 結果的に筋萎縮性側索硬化症 (ALS) であった症例である.症例1, 2の治療結果は, スプリントや咬合改善治療が顎関節症の関連疾患への対症療法として今後有用になり得る発展的な可能性を示すものであり, 一方, 症例3は, 顎関節症との鑑別を要す類似疾患の存在への注意を喚起する症例である.
顎機能異常と関連医学との接点は, いろいろなパターンが考えられるが, 現状では不明な点が多すぎて臨床で簡単に振り分けられるものではない.そのため, 顎関節症の関連症状に対しては常に慎重な対応が必要であり, 今後は関連のメカニズムの解明に取り組む必要がある.

著者関連情報
© 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top