日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
適正なガイドによる顎に加わる力を制御する
澤田 宏二
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 10 巻 1 号 p. 25-30

詳細
抄録

夜間パラファンクションに起因すると思われる, 顎関節症2症例を報告する.2症例ともに咬合治療によって顎関節症症状を改善することができた.
【症例1】患者さんは起床時の右側顎関節習慣性閉口障害を有する18歳男性である.当科初診より約1年前より, 起床時に右側顎関節閉口障害が生じたが, 自力で整復が可能であったので放置した.しかし, 起床時閉口障害の発生頻度が多くなり, 毎朝右側顎関節閉口障害が生じるようになり, 当科を来院した.患者さんは側方滑走運動時に第2大臼歯のみが歯牙接触していた.スタビリゼーションスプリントおよび前歯部メタルスプリントにより, アンテリアガイダンスを修正することで症状は消失した.
【症例2】患者さんは左側顎関節部に痛みを訴える51歳女性である.左側顎関節部の違和感のため, 熟睡することができなかった.患者さんは左側第二小臼歯が鋏状咬合となっていた.同部の咬合接触点を修正することで, 顎関節症症状は改善し, 夜間も十分な睡眠をとることが可能となった.
この2症例の顎運動を6自由度顎運動測定装置 (東京歯材社製TRIMET) により測定した結果, 側方滑走時の不適切な臼歯部咬合接触がある咬合状態では, パラファンクション時の作業側下顎頭の動きは後下方に変位するのに対し, ガイドを歯列の前方歯に修正することで, 作業側下顎頭の動きは上方に変化し, 顎関節症症状が改善したことが分かった.今回の症例よりアンテリアガイダンスを適切な状態に修正することで, 顎関節にかかる力をコントロールすることが可能であり, 顎関節症症例にアンテリアガイダンスの修正が有効な治療法となりうることが示唆された.

著者関連情報
© 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top