日本顎口腔機能学会雑誌
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側方咬合位の咬合接触状態が咀嚼運動経路のパターンに及ぼす影響
庄内 康晴志賀 博小林 義典
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2003 年 10 巻 1 号 p. 31-41

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抄録

側方咬合位の咬合接触状態が咀嚼運動経路のパターンに及ぼす影響を明らかにする目的で, 健常者60名の咀嚼運動と中心咬合位から側方へ1mm (L1) , 2mm (L2) , 3mm (L3) 滑走させた側方咬合位の咬合接触状態を記録し, チューインガム咀嚼時の運動経路のパターンを分類後, 咬合接触状態について, 側方咬合位間と咀嚼運動経路のパターン間で定量的に比較し, 以下の結論を得た.
1.パターンの発現率は, 作業側に向かってスムーズに開口後, convexを呈して閉口するパターン1が40.8%で最も高く, 非作業側に向かって開口後作業側へ向かい, その後convexを呈して閉口するパターンIIIが28.3%, パターンIと同様な概形であるが, concaveを呈して閉口するパターンIIが10.8%, パターンIIIと同様な概形であるが, concaveを呈して閉口するパターンIVと開閉口路が交叉するパターンVIIが5.0%, 開閉口路がconvexを呈するパターンVと通常とは逆のパターンを呈するパターンVIが4.2%, 開閉口路が線状を呈するパターンVIIIが1.7%の順であった.なお, パターンVIIIは, 1.7%にとどまったので, 以下の群間の比較から除外した.
2.各側方咬合位における咬合接触歯数は, パターンI~孤群 (I~VII群) のいずれも, 作業側, 平衡側ともに, L1, L2, L3の順に側方咬合位が側方へ滑走するに従って, 有意に減少した.
3.咬合接触歯数の発現率は, L1の作業側では, IとII群が少ない歯数に分布する傾向を示したが, L1の平衡側では, いずれの群も, 咬合接触が存在する傾向を示した.L2の作業側では, I, II, VI, VII群が少ない歯数に分布したが, L2の平衡側では, I群のみが咬合接触のない傾向を示した.L3の作業側では, いずれの群も少ない歯数に分布したが, L3の平衡側では, いずれの群も咬合接触がなくなる傾向を示した.また, 2パターン問の比較では, L1が4組, L2が16組, L3が12組にそれぞれ有意差が認められた.
4.以上のことから, 側方咬合位の咬合接触状態は, 中心咬合位から側方へ滑走させた距離の差異によって変化し, また咀嚼運動経路のパターンの差異は, 2mm滑走させた側方咬合位で明確であり, この側方咬合位の咬合接触状態の差異が咀嚼運動経路のパターンの差異に関連していることが示唆された.

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