抄録
関節のトライボロジの観点からの研究の歴史的な経過を解説し, 関節の潤滑機構に関する筆者の現在の考え方を, いくつかの研究結果とともに示す.20世紀初頭以来, 関節の優れた潤滑機構を説明するために提唱されたいくつかの考え方は, 1980年代に流体潤滑と境界潤滑の複合した多モード潤滑機構に統一された.しかし, 近年筆者が, ロボットアームを主要な測定装置として動物関節の摩擦測定を行った詳細な研究によると, 境界潤滑の効果は, ほとんど認められず, もっぱら流体潤滑が主たる関節潤滑のメカニズムであると考えられることが示された.